にのだん社会保険労務士事務所

人と人をつなぐ「たすき」となり

人事労務管理全般をサポートします

にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和5年8月号(No.45)

【①勤務形態がバラバラな方の有給】

 先日、行政官庁で窓口相談の仕事の機会を頂いた時、とある会社の経営者様から「シフトで週の勤務がバラバラな従業員の有給休暇の付与日数について教えて欲しい」と相談がありました。私の知識の範囲で説明をしましたが「それでは週により2日や5日など勤務が大きく異なる従業員に対する付与日数の明確な説明にならない」と若干お叱りを受けることになりました。

 その時は社労士を批判された気持ちになり、心穏やかにはなれませんでしたが、後で冷静に考えると経営者の立場として違反のないよう正しく計算したいのは当然だと感じた上、あらためて調べてみると過去に勤務形態がバラバラな介護職員に対応する有給休暇の付与日数の計算方法を行政官庁が介護事業所向けに通達している文章が存在し、有給休暇の付与日数を決定するための優先順位が以下のように示されていました。今後のご参考にしてください。

 ①まずは基準日(有給の権利が発生した日)時点での契約内容(1日●時間 週●日)で判断付与する

 ⇒上記契約を交わしていない

 ②基準日以後の年間予定勤務日数で判断付与する (年間216日以下であっても4日以下の有給休暇付与が発生)

 ⇒上記年間予定勤務日数を決めていない

 ③基準日前の実績で年間所定労働日数を計算付与する

 【例】入社から半年、月平均所定労働日数が14日なら14×6ヵ月×2で168日・・・168日なら付与日数は5日

【②物価急上昇による商売の難しさ】

 現在、物価の上昇が止まらない様子です。様々な要因がここ数年で発生し、世界と同様日本でも急激な物価高により国民の生活が非常に苦しくなっている印象を感じます。

 私はかつて食品スーパーの勤務も経験しており、食料品の価格の変化は非常に関心の強い話題であると感じます。お店で販売している金額からどれくらいの原価なのかは経験上理解出来ますが、ここ最近の食料品の販売価格の値上げを見ていると、私が勤務していた時代の物価のデフレ状態、モノの価格破壊のような時代はもう来ないだろうと感じます。

 かつて色んな部門を担当しましたが、例えば「玉子」は物価の優等生と言われ、季節的な相場変動があっても大幅な急上昇のない商品でした。クリスマスが近づくと原価は200円前後まで上昇しますが、それでも相場が安定すると大体1パック100円台後半、相場が下がると150円前後で1パックが販売される商品でしたが、最近のエサ代の高騰や鳥インフルエンザ拡大の影響で玉子の相場が急上昇し、現在も価格は下がることがない様子です。 

 今の原価は想像するに通常の安定していた相場より100円近くアップしているのではないでしょうか?私が担当していた時のように原価割れとは言え、100円以下で特売するような販売は今後二度と出来ないかもしれません。

 今になり、物価が急上昇した印象が強いですが、本来はもっと早い時期に価格転嫁されるべきであり、外国と比べると日本の物価はあまりに安すぎたのかもしれません。

 これからも原材料の高騰や国の推し進める最低賃金の引き上げにより、モノの価格は上がる可能性が高いですが、消費者が考える販売価格と適正価格に大きな乖離が発生すると、販売量全体が激減し、買い控えにより商売が停滞する可能性もあります。

 簡単には値上げ出来ない人件費を上げないと人材の確保が難しいなど私が経験してきた時代とは比べものにならないくらい現在の商売は非常に難しい時代を迎えているのかもしれません。

【③従業員を失望させた社長の会見】

 毎月の事務所だよりは①②の構成で自身の言葉を掲載させて頂いていますが、今回は③も付け加えさせて頂くことにしました。7月25日のとある社長の記者会見を見て居ても立っても居られない気持ちになったからです。

 記者会見の目的は会社の不正に対する謝罪が目的であったにも関わらず、社長の発する言葉からは自身の責任を言ってるつもりでも「あくまで不正行為をしたのは会社の社員、自身の知らないところで行われた。私は裏切られた。不正を行った社員は許せない。厳正に処分する」これらの本音は会見は自発的ではなく仕方なく謝罪しているというのがありありと伝わる社長の会見で失望させられました。私は社会保険労務士として従業員を守れない切り捨てるような扱いをする組織は絶対に認められないし、こんな会社に存在意義なんて全くないと強く感じます。

 今から20年程前に大手食品メーカーが乳飲料の大規模な食中毒事件を発生させた時、記者に囲まれた社長が「私だって寝てないんだよ」とキレたことがありました。自分には関係ない私も被害者なんだという意識が言葉に表れるとその会社の評価は一気に崩れ去りました。それとは反対に昔とある大手証券会社が自主廃業した時は「私らが悪いんであって社員は悪くありませんから、社員の再就職をよろしくお願いします」あの涙ながらの会見は社員を第一に考えていた社長が自然に発した言葉で今でも評価されています。

 記者会見で謝罪したからといって会社の不正が許されることは決してありません。しかし社長が発する言葉によって、もしかしたら世間は会社に対しての評価は少しでも変わったかもしれませんし、何より社長の言葉を聞いて、そこで働く社員の気持ちがもう一度会社を何とか良くして行こうという方向性に変えることが出来る大きなチャンスだったかもしれません。

 今回の社長の会見は失望ばかり与えられた印象です。信用を裏切った顧客への謝罪や補償のみならず、従業員に対して日頃からまかり通っていた労働に関する法律を逸脱した大変粗悪な人事労務管理に対して会社は心からの謝罪と誠意ある対応をしなくてはならないと感じます。 

 ~最後までお読みいただきありがとうございました~